歯を失うと認知症リスクは上がる?歯の本数・噛む力と脳の健康寿命
- 2 日前
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認知症を予防するために、ウォーキングや筋力トレーニング、脳トレ、食生活の改善を意識している方は多いでしょう。
しかし、脳の健康を考えるうえで見落とされやすいものがあります。
それが、歯と口の健康です。
近年の研究では、歯の本数が少ないことや、噛む力が低下していることが、認知機能の低下や認知症の発症と関連する可能性が報告されています。
歯は食事のためだけにあるのではありません。しっかり噛むことは、栄養状態、脳への感覚刺激、全身の炎症、運動や社会参加など、さまざまな経路を通じて脳の健康と関係しています。
今回は脳神経外科の視点から、なぜ歯の健康が認知症と関係するのか、歯を失った場合に何をすればよいのかを分かりやすく解説します。
この記事のポイント
歯が少ない人ほど、認知機能低下や認知症のリスクが高い傾向が報告されている
重要なのは歯の本数だけでなく、噛む力や口腔機能を維持すること
歯を失っても、義歯やブリッジなどで噛む機能を補うことには意味がある
歯の健康だけで認知症を完全に予防できるわけではない
歯科検診と生活習慣病管理を組み合わせることが重要
歯の本数と認知症には関係があるのか
複数の研究をまとめた解析では、歯を失っている人は、歯が十分に残っている人と比べて、認知機能低下や認知症を発症するリスクが高い傾向にあることが示されています。
また、失った歯の本数が多くなるほど、認知機能低下との関連が強くなる「量反応関係」も報告されています。
日本人高齢者を対象にした研究でも、歯が少ないまま義歯を使用していない人では、20本以上の歯が残っている人より認知症の発症リスクが高かったことが報告されています。
さらに、日本の高齢者を追跡した研究では、歯が20本以上残っている人と比較して、0~9本の人では「認知症にならずに生活できる期間」に推定約2年の差が認められました。
ただし、ここで注意したいのは、歯を失うことが認知症を直接引き起こすと証明されたわけではないという点です。
歯の状態には、年齢、喫煙、糖尿病、食生活、経済状況、運動習慣など、多くの要素が関係します。また、認知機能が低下した結果として歯磨きや歯科受診が難しくなり、口腔環境が悪化することもあります。
現時点では、歯の喪失は認知症の「原因」と断定するのではなく、認知症リスクと関連する重要なサインの一つと考えるのが適切です。
なぜ歯の健康が脳と関係するのか
歯と認知機能を結びつける仕組みは、一つだけではありません。複数の要因が重なっていると考えられています。
1.噛むことによる脳への刺激が減少する
食べ物を噛む動作では、歯、歯ぐき、舌、顎の筋肉から多くの感覚情報が脳へ送られます。
噛むことは単なる上下運動ではなく、食べ物の硬さや大きさ、温度、噛む力などを瞬時に判断する複雑な活動です。
歯を失って噛む回数や咀嚼能力が低下すると、こうした口腔感覚や運動による刺激が減少する可能性があります。
日本の大規模追跡研究でも、歯の喪失だけでなく、噛む機能の低下、飲み込みにくさ、口の乾燥が、その後の主観的な認知機能低下と関連していました。
2.食べられる食品が偏り、栄養状態が悪化する
歯が少なくなると、肉類、魚、野菜、果物、ナッツ類など、噛み応えのある食品を避けやすくなります。
その結果、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足し、低栄養や筋力低下につながることがあります。
筋力が落ちて外出が減れば、運動不足や人との交流の減少にもつながります。こうした変化は、いずれも認知機能を守るうえで望ましい状態とはいえません。
3.歯周病による慢性的な炎症
歯周病は、歯ぐきだけの病気ではありません。
歯周病によって生じた炎症性物質が全身に影響し、糖尿病や心血管疾患、脳血管疾患などと関連することが知られています。
認知症との関係についても研究が進められており、慢性的な炎症が脳の健康に影響する可能性が指摘されています。ただし、歯周病を治療すれば認知症を確実に予防できるとまでは証明されていません。
4.会話や外出の機会が減る
歯が抜けた状態や、合わない義歯を気にして、人前で話したり笑ったりすることを避ける方もいます。
食事会への参加や外出の機会が減り、社会的に孤立すると、認知機能の低下につながる可能性があります。
口の健康を保つことは、食事だけでなく、会話、笑顔、人とのつながりを守ることでもあるのです。
「20本の歯」が一つの目安とされる理由
日本では「80歳になっても20本以上、自分の歯を保とう」という8020運動が知られています。
20本という数字は、すべての人に共通する絶対的な境界線ではありません。しかし、一般的には20本程度の歯があれば、多くの食品を比較的しっかり噛めると考えられています。
大切なのは、本数だけを数えることではありません。
左右の歯で噛めるか
奥歯の噛み合わせが保たれているか
歯周病や虫歯が進行していないか
義歯が合っているか
食事中にむせることがないか
口の乾燥が強くないか
これらを含めて、口全体の機能を維持することが重要です。
歯を失っていても、今からできることがある
「すでに歯を何本も失っているから、もう遅い」と考える必要はありません。
研究では、歯が少ない人でも、義歯などを使用して噛む機能を補うことで、認知機能低下との関連が弱くなる可能性が示されています。近年の追跡研究でも、部分的に歯を失った高齢者では、義歯の使用が認知機能低下の進行を抑える可能性が報告されています。
ただし、義歯を入れるだけですべてが解決するわけではありません。
合わない義歯を使い続けると、痛みや噛みにくさが生じ、かえって食事量が減ることもあります。定期的に歯科医院で調整を受け、無理なく噛める状態を保つことが大切です。
欠損した歯を補う方法には、主に次のようなものがあります。
義歯・入れ歯
ブリッジ
インプラント
適した方法は、残っている歯、顎の骨、持病、服用している薬、費用などによって異なります。歯科医師と相談して決めましょう。
脳の健康を守るために今日から始めたい5つの習慣
1.毎日の歯磨きを丁寧に行う
歯と歯ぐきの境目、奥歯、歯と歯の間は汚れが残りやすい場所です。
歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも活用しましょう。力を入れすぎず、毎日継続することが大切です。
2.抜けた歯を放置しない
歯が抜けた状態を放置すると、周囲の歯が動いたり、噛み合わせが崩れたりすることがあります。
食べにくさを感じていなくても、早めに歯科医院へ相談してください。
3.定期的な歯科検診を受ける
虫歯や歯周病は、初期には自覚症状が乏しいことがあります。
痛みが出てから受診するのではなく、定期的に歯科検診やクリーニングを受けることが、歯を長く残すための近道です。
4.噛む力と飲み込む力を維持する
食事では、無理のない範囲でよく噛むことを意識しましょう。
食事中にむせる、硬いものが食べにくくなった、滑舌が悪くなった、口が乾くといった変化は、口腔機能が低下しているサインかもしれません。
5.高血圧・糖尿病・脂質異常症を管理する
認知症、特に血管性認知症の予防では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、運動不足などの管理も欠かせません。
歯だけをケアするのではなく、運動、睡眠、食事、生活習慣病の治療を組み合わせて、脳と全身を守ることが重要です。
歯が健康なら認知症を完全に予防できる?
歯を多く残していれば、必ず認知症にならないということではありません。
認知症には、加齢、遺伝的要因、脳血管疾患、生活習慣病、聴力低下、運動不足、社会的孤立など、さまざまな要因が関係します。
口腔ケアは、認知症予防に関係する可能性のある重要な取り組みの一つですが、万能な予防法ではありません。
だからこそ、歯科検診だけでなく、血圧や血糖の管理、適度な運動、十分な睡眠、人との交流などを総合的に続けることが大切です。
こんな症状がある場合は医療機関へご相談ください
次のような症状が増えてきた場合は、「年齢のせい」と決めつけず、脳神経外科や脳神経内科へご相談ください。
同じことを何度も聞くようになった
財布や鍵などを頻繁になくす
日付や場所が分からなくなることがある
料理や支払いなど、これまでできていたことが難しくなった
歩き方が不安定になった
言葉が出にくい、ろれつが回りにくい
片側の手足に力が入りにくい
突然の激しい頭痛や強いめまいがある
急に言葉が出なくなった、片側の手足が動かしにくい、顔がゆがむなどの症状は、脳梗塞の可能性があります。症状が突然現れた場合は、すぐに救急要請してください。
まとめ|歯を守ることは、食事・会話・脳の健康を守ること
歯の健康と認知症の間には、さまざまな研究で関連が報告されています。
歯を失うことは、噛む刺激の減少だけでなく、栄養状態の悪化、歯周病による炎症、外出や会話の減少などにつながる可能性があります。
大切なのは、単に歯の本数だけを見ることではありません。
自分の歯や義歯を使って、無理なく食べ、話し、笑える状態を維持することが、脳の健康寿命を支える一つの要素になります。
今日からできることは、決して特別なことではありません。
丁寧に歯を磨く。抜けた歯を放置しない。定期的に歯科検診を受ける。生活習慣病をきちんと管理する。
歯のケアを、口の中だけの問題ではなく、将来の脳と全身の健康を守る習慣として見直してみましょう。
もの忘れ・頭痛・めまいなどが気になる方へ
横浜フロント脳神経外科・泌尿器科では、頭痛外来、めまい外来、脳神経外科、脳神経内科、生活習慣病の診療を行っています。
もの忘れだけでなく、頭痛、めまい、しびれ、歩行の不安定さなど、気になる症状がある場合はご相談ください。
横浜フロント脳神経外科・泌尿器科神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町1-41THE YOKOHAMA FRONT 3階横浜駅きた西口直結・徒歩3分電話:045-620-2610休診日:日曜日
※歯や義歯、歯周病に関する診断・治療については、歯科医療機関へご相談ください。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。個別の診断や治療方針については、医師または歯科医師の診察を受けてください。
よくある質問
歯が少ないと必ず認知症になりますか?
いいえ。歯が少ないからといって、必ず認知症になるわけではありません。研究で示されているのは統計上の「関連」であり、認知症の発症には年齢、生活習慣病、運動、睡眠、社会的交流など多くの要因が関係します。
入れ歯でも脳の健康に意味がありますか?
適切に調整された義歯で噛む機能を回復することには意味があると考えられています。ただし、義歯の使用によって認知症を確実に予防できると証明されたわけではありません。
歯は何本残っていれば安心ですか?
20本が一つの目安として使われますが、本数だけでは判断できません。奥歯の噛み合わせ、歯周病の状態、義歯の適合、飲み込む力なども重要です。
もの忘れは何科を受診すればよいですか?
脳神経内科、脳神経外科、もの忘れ外来などが受診先になります。急激な変化、言葉の出にくさ、手足の麻痺などがある場合は、脳卒中の可能性があるため早急な受診が必要です。





