突然のめまい・ふらつきは脳梗塞の前兆?危険なサインと原因を脳神経外科が解説

「突然、目の前がぐるぐる回った」「まっすぐ歩けないほどふらつく」「急にめまいがして、脳梗塞ではないか心配」
このような症状が突然起こると、不安になる方は少なくありません。
めまいの多くは、良性発作性頭位めまい症(BPPV)など耳の病気によって起こります。しかし、小脳や脳幹の脳梗塞・脳出血などでも、めまいやふらつきが突然現れることがあります。
特に、
顔や手足の片側がしびれる・動かしにくい
ろれつが回らない
言葉が出てこない
物が二重に見える
立てない、まっすぐ歩けない
突然、経験したことのない激しい頭痛が起こった
といった症状を伴う場合は、脳卒中を疑う必要があります。突然の歩行困難、めまい、バランス障害も脳卒中で起こり得る症状です。
このような症状がある場合は、症状が改善するのを待たず119番を検討してください。
この記事では、**「めまいと脳梗塞の関係」「危険なめまいの特徴」「耳からくるめまいとの違い」「何科を受診すればよいのか」**について、わかりやすく解説します。
めまいは脳梗塞の前兆になることがある?
結論からいうと、めまいだけで脳梗塞と判断することはできません。
実際には耳の病気など脳卒中以外の原因が多くあります。
しかし、小脳や脳幹など、身体のバランスや眼球運動に関係する部分に脳梗塞が起こると、突然のめまい・ふらつき・歩行障害として発症する場合があります。
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳の働きが突然障害される病気で、主に
脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
に分けられます。国立循環器病研究センターも、脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりして急に脳の機能が障害される病気と説明しています。
「めまいが治ったから大丈夫」とは限らない
注意したいのが、症状が短時間で消失するケースです。
脳への血流が一時的に悪くなる**一過性脳虚血発作(TIA)**では、神経症状が一時的に出現したあと改善することがあります。
そのため、
「10分ほどふらついたけれど治った」「突然ろれつが回らなくなったが、その後普通に戻った」
という場合でも、「治ったから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
脳卒中を疑う「危険なめまい」の特徴
めまいを感じたときに最も重要なのは、回っているか、ふわふわするかだけで判断しないことです。
めまいの感じ方だけでは、耳の病気と脳卒中を完全に区別することはできません。
特に次の症状に注意してください。
① 突然発症した
「何となく数日前から」というより、
「○時○分ごろ、突然おかしくなった」
という発症は重要です。
脳卒中は突然症状が現れることが特徴の一つです。
② 立てない・歩けないほどふらつく
ただ少しフワフワするのではなく、
支えがないと立てない
まっすぐ歩けない
一方向に倒れてしまう
急に歩行が困難になった
場合は注意が必要です。
特に突然の強いバランス障害は、脳幹や小脳の障害でも起こることがあります。
③ ろれつが回らない
「言葉がおかしい」「舌が回らない」「うまく話せない」という症状は、脳卒中を疑う重要なサインです。
本人が気づかず、家族や周囲の人が
「いつもと話し方が違う」
と気づくこともあります。
④ 顔や手足の片側にしびれ・麻痺がある
突然、
片腕に力が入らない
片足が動かしにくい
顔の片側が下がる
身体の片側だけしびれる
などの症状が出た場合は、脳卒中を強く疑います。
⑤ 物が二重に見える・見え方がおかしい
めまいと同時に、
物が二重に見える
急に視野が欠けた
見え方が突然変わった
などの症状があれば注意が必要です。
⑥ 突然の激しい頭痛を伴う
「今まで経験したことのない突然の激しい頭痛」
にめまい、吐き気、意識障害などを伴う場合には、くも膜下出血など緊急性の高い病気も考える必要があります。突然の原因不明の激しい頭痛は脳卒中の警告症状の一つです。
覚えておきたい脳卒中の「FAST」
脳卒中を早く見つけるためによく用いられるのがFASTです。
F:Face(顔)
笑ったとき、顔の片側が下がっていないか。
A:Arm(腕)
両腕を前に上げたとき、片方だけ下がってこないか。
S:Speech(言葉)
ろれつが回らない、言葉が出ない、会話がおかしくないか。
T:Time(時間)
ひとつでも突然現れたら、発症時刻を確認して速やかに救急要請を検討します。
さらにめまいの場合は、**Balance(急なバランス障害)やEyes(急な視覚異常)**にも注意することが重要です。
めまいの原因で多い「耳の病気」
めまい=脳梗塞ではありません。
めまいの原因として非常によくみられるのが、内耳など平衡感覚に関係する部分の病気です。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
代表的なめまいの一つです。
例えば、
寝返りをした
ベッドから起き上がった
上を向いた
下を向いた
といった頭の位置の変化によって突然ぐるぐる回るのが特徴です。
日本めまい平衡医学会では、BPPVでは特定の頭位変換によってめまいが起こり、通常は数十秒以内に消失すると説明しています。
吐き気を伴う場合がありますが、通常は言語障害や手足の麻痺、意識障害などを伴いません。
メニエール病
メニエール病では、
回転性めまい
耳鳴り
難聴
耳が詰まった感じ
などが繰り返し現れることがあります。
耳の症状を伴うめまいでは、耳鼻咽喉科領域の病気を考えます。
前庭神経炎
突然、強い回転性めまいが起こり、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
日本めまい平衡医学会では、前庭神経炎では激しいめまいが数日間で軽快した後も、身体を動かしたときのふらつきが続く場合があるとしています。
このような耳由来のめまいと脳卒中によるめまいは、患者さん自身では判断が難しい場合があります。
「回転性めまいなら耳」とは限らない
ここは非常に重要です。
以前は、
ぐるぐる回る=耳ふわふわする=脳
といった説明をされることもありました。
しかし実際には、めまいの感じ方だけでは脳卒中を除外できません。
小脳・脳幹の脳卒中でも回転性めまいが起こる場合があります。
急性の強いめまいでは、症状の経過、眼球運動、歩行状態、神経症状などを総合的に評価することが重要とされています。
そのため、
「ぐるぐる回るから耳の病気だろう」
と自己判断するのは避けましょう。
貧血・低血圧・低血糖でもふらつきは起こる
脳や耳以外にも、ふらつきの原因はいくつもあります。
貧血
貧血では、
立ちくらみ
動悸
息切れ
倦怠感
顔色が悪い
といった症状を伴うことがあります。
起立性低血圧
座った状態や寝た状態から急に立ち上がった際、
「目の前が暗くなる」「クラッとする」
といった症状が起こることがあります。
低血糖
糖尿病治療中の方などでは、
冷や汗
手の震え
動悸
強い空腹感
意識がぼんやりする
などとともに、めまいやふらつきを感じる場合があります。
ただし、症状だけで原因を自己判断するのは危険です。
首の痛みとめまいが同時に起きた場合
「肩こりだからめまいがする」と考える方も多いのですが、単純に“首がこって脳への血流が悪くなった”と考えるのは適切ではありません。
特に注意したいのが、
突然の首の痛み
後頭部の強い痛み
めまい
ふらつき
物が二重に見える
ろれつが回らない
などが突然現れた場合です。
まれではありますが、首の血管の壁が裂ける頸部動脈解離が脳梗塞の原因になることがあります。頭痛や首の痛みは頸部動脈解離の代表的な初発症状です。
強い症状が突然現れた場合には自己流の首のマッサージなどで様子を見るのではなく、医療機関に相談してください。
めまいで119番を呼ぶべき症状
次のような症状が突然起きた場合には、救急受診を考えてください。
突然、立てなくなった
突然、まっすぐ歩けなくなった
顔や手足の片側が動かない・しびれる
ろれつが回らない
言葉が理解できない・出てこない
物が二重に見える
急に視野がおかしくなった
意識がおかしい
経験したことのない激しい頭痛がある
めまいと強い神経症状が同時に起きた
「少し休んでから考えよう」ではなく、時間を意識することが重要です。
脳梗塞は時間との戦い
急性期脳梗塞の治療では、時間が非常に重要です。
日本脳卒中学会の指針では、適応条件を満たす虚血性脳卒中に対する静注血栓溶解療法(アルテプラーゼ)は、原則として発症から4.5時間以内に治療可能な患者が対象です。
また、4.5時間以内であっても治療開始が早いほど良好な転帰が期待できるとされています。
さらに患者さんの状態や画像検査の結果によっては、血管内治療など別の治療が検討されることもあります。
そのため、
「4.5時間あるから待っても大丈夫」ではありません。
脳卒中が疑われる場合には、できるだけ早く医療につなげることが大切です。
救急車を待つ間にしておくこと
脳卒中が疑われる場合には、
症状が始まった時刻を確認する
発症時刻が分からなければ「最後に普通だった時刻」を確認する
お薬手帳を準備する
持病や服用薬を伝えられるようにする
自分で自動車を運転しない
意識や飲み込みがおかしい場合は無理に飲食させない
ことが重要です。
発症時刻は治療方針を決めるうえで非常に重要な情報です。日本脳卒中学会の指針でも、発症時刻が不明な場合には「最後に正常だった時刻」を基準として評価する考え方が示されています。
めまいは何科を受診すればいい?
突然のめまい+神経症状
救急要請を検討してください。
脳卒中が疑われる場合、救急医療機関で迅速な診断が必要です。
めまい・ふらつきがあるが緊急症状はない
脳神経外科・脳神経内科への受診が選択肢になります。
特に、
初めて経験するめまい
原因が分からない
突然発症した
頭痛を伴う
高血圧・糖尿病・脂質異常症がある
不整脈がある
過去に脳梗塞・TIAを指摘されたことがある
場合には、一度脳の病気がないか確認する意義があります。
耳鳴り・難聴を伴う
耳の病気が疑われる場合には、耳鼻咽喉科が適しています。
めまいの診察では何を調べる?
めまいの診断では「MRIを撮ればすべて分かる」というわけではありません。
医療機関では、
症状が始まった時間
突然か徐々にか
症状が持続しているか
頭を動かすと起こるか
手足の麻痺やしびれ
言語障害
眼球運動
歩行状態
耳鳴り・難聴
血圧や脈拍
持病や服用薬
などを総合的に確認します。
必要に応じてCT・MRI・MRAなどの画像検査を行い、脳梗塞・脳出血・脳血管の異常などがないか評価します。
急性めまいの診断では、症状のパターンと神経学的診察を組み合わせて評価することが重要です。
「突然のめまい」は一度きちんと原因を確認しましょう
めまいの多くは、BPPVなど耳に由来する病気です。
しかし、
突然発症しためまい・ふらつきの中には、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が隠れていることがあります。
特に、
めまい+ろれつが回らないめまい+片側のしびれ・麻痺めまい+物が二重に見えるめまい+立てない・歩けないめまい+突然の激しい頭痛
という組み合わせには注意してください。
脳卒中が疑われる症状が突然起こった場合には、クリニックの予約を待つのではなく119番による救急受診を優先してください。
一方、緊急性の高い症状はないものの、
「めまいが繰り返す」「原因が分からない」「脳の病気ではないか不安」
という場合には、脳神経外科など専門医への相談をおすすめします。
よくある質問
Q. めまいだけでも脳梗塞の可能性はありますか?
あります。
ただし、めまいの多くが脳梗塞という意味ではありません。
一方、小脳や脳幹などの脳梗塞では、めまいやふらつきが目立つ場合があります。そのため、突然発症した強いめまいや歩行障害では注意が必要です。
Q. めまいが数分で治れば大丈夫ですか?
症状が治ったからといって、必ず安全とは限りません。
特に、しびれ・脱力・言語障害・視覚異常などが一時的に出現した場合には、TIAなどの可能性も考え、早めの医療機関受診が必要です。
Q. 横になると治るめまいなら脳梗塞ではありませんか?
横になることで症状が軽くなったとしても、それだけで脳卒中を否定することはできません。
めまいの原因は症状の感じ方だけでは判断できないため、発症の仕方や神経症状の有無などを総合的に評価します。
Q. めまいの場合、MRIを撮った方がいいですか?
すべてのめまいにMRIが必要なわけではありません。
診察によって脳卒中など中枢神経の病気が疑われる場合には、CT・MRI・MRAなどの画像検査を検討します。
Q. 何度もめまいを繰り返しています。脳神経外科を受診してもいいですか?
もちろん受診可能です。
特に初めての症状、原因不明のめまい、頭痛を伴うめまい、突然のふらつきなどでは、脳の病気がないか確認することが重要です。
まとめ|「突然のめまい・ふらつき」は脳卒中のサインを確認
めまいには、耳の病気、血圧の変化、貧血などさまざまな原因があります。
しかし、突然のめまいやふらつきは、脳梗塞などの脳卒中で起こることもあります。
とくに、
顔・腕・言葉の異常、歩行困難、視覚異常、突然の激しい頭痛
を伴う場合は要注意です。
脳卒中は早期の診断と治療が重要です。
「いつものめまいだから」と決めつけず、今までと違う症状や突然の強い症状がある場合には、適切な医療機関を受診してください。
参考資料
日本脳卒中学会「静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版」
国立循環器病研究センター「脳卒中」
日本めまい平衡医学会「めまいQ&A」
GRACE-3 Acute Dizziness and Vertigo Guideline





